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顧客理解が「資産」に変わる―インサイトを組織で使うためのアイデア

  • 執筆者の写真: コルグロ 福岡
    コルグロ 福岡
  • 11月11日
  • 読了時間: 20分
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こんにちは、コルグロの福岡です。


前回のブログ「なぜ " 生の声 " が経営を動かすのか ─ 顧客インタビューの必要性」では、顧客理解の重要性についてお話ししました。

顧客理解を深め、利益につなげるためには「顧客インサイト」を導き出すことが不可欠であり、そのインサイトとは「顧客本人も気づいていない深層心理や小さな秘密」のことです。そして、それを導き出す唯一の方法がデプスインタビューであることをお伝えしました。



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しかし、デプスインタビューを実施すれば成果が出るかというと、そう単純ではありません。

インサイトの「導出」と「活用」は、実はまったく別物だからです。


せっかくインタビューを行い、インサイトを導き出しても、それが「使える形」になっていなければ施策に落とし込むことはできません。

結果として、得られた顧客理解が資料の中で眠ったまま、施策にも経営にも活かされずに終わってしまう。そんな光景を、私も現場で何度も見聞きしてきました。

それは、インサイトを実務で活かすことの難しさを何よりも物語っているように思います。


では、インサイトを"使える形"にして施策に変えるには、どうすればいいのでしょうか。


その鍵は、インサイトを「活用するチーム」や「活用シーン」などのレイヤーに沿って情報を再編集し、組織に根付かせることです。

コルグロでは、「N1CXインタビュー」のサービス開発・設計時に「組織に根付く顧客理解の取り組み」という体験を試行錯誤の上、開発をしてきました。

このサービスの特徴のひとつに、「導き出したインサイトを確実に施策へ変換できるよう、4つの活用視点(カテゴリ)を設計に組み込んでいる点」にあります。


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コルグロが提供する「N1CXインタビュー」は、手法としてはデプスインタビューで、顧客体験(CX)の改善や構築を目的に設計されたインタビューサービス

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そこで本記事では、まずインサイトがどのような場面で活用できるのかを整理したうえで、 コルグロが実践している「使える形」へと整えるアプローチをご紹介します。




|インサイトを活用する4つのシーン


インサイトを「活用する」とは、具体的にどのような場面を指すのでしょうか。

コルグロでは、インサイトを活用するシーンを4つのカテゴリに分類しています。これらは、企業が顧客理解をもとに実際にアクションを起こす主要な領域であり、N1CXインタビューではインタビューの目的を明確にするため、そして導き出したインサイトを確実に活用するための重要な視点として扱っています。


■4つのカテゴリとは

  • マーケティングコミュニケーション:広告やLP、メッセージング、プロモーションなど、顧客に「伝える」施策を設計する際の根拠として活用します。

  • ブランディング:ブランドストーリーやナラティブ、ブランド体験の設計など、企業や商品の「らしさ」を定義し、体験として表現する際の核として活用します。

  • UX/CX:顧客体験の改善や新たな体験価値の創出において、体験上の課題や改善の方向性を見出すために活用します。

  • 商品開発:商品・サービスの企画、改良、PMF検証など、機能設計やサービス価値の仮説づくりに活用します。


このように、インサイトは組織のあらゆる判断や施策に影響を与える「顧客理解の軸」となります。 しかし、そのためには誰が読んでも理解でき、他の部署でも再利用できる「共有可能な形」に整える必要があります。 では、どうすればインサイトを「使える形」にできるのでしょうか。


|インサイトを「使える形」にする


ーインサイトの表現方法が定まっていない問題


前回のブログでお伝えしたように、インサイトとは「顧客本人も気づいていない深層心理や小さな秘密」のことです。デプスインタビューと、その後の丁寧な分析を通じて、この「小さな秘密」を探り当てることが、顧客理解の第一歩となります。

しかし、ここで大きな問題があります。

それは、インサイトをどう表現するかについて、明確な定義や共通の方法が存在しないということです。


顧客の声を集めること自体は、多くの企業ですでに取り組まれているケースが多いでしょう。 営業や接客、カスタマーサポートといった顧客と接する現場の担当者が、日々の対応の中で得た気づきをCRMに記録したり、個人的なメモにストックするといったようなことは想像に難くないのではないでしょうか。


しかし、せっかく集めた顧客の声が次のような状態になっていることも多く耳にします。

  • 現場の担当者が個人的なメモやノートに断片的に書き留めたまま

  • いち顧客の意見の記録としてCRMへ記録を残しているが、「一人の顧客の意見」という扱いになり、施策に反映する判断材料として重視されない

  • 数人から聞いた生の声を社内チャットツールで事実とその所感をシェアしているものの、情報がまとまっておらず流れて埋もれてしまう

  • 「顧客は〇〇を求めている」といった抽象的な一文でまとめられている

  • 施策を考える担当者や経営層まで情報が届いていない


これらはすべて、顧客の声やインサイトを「得ている」という事実は残っているものの、それを「活用できる形」にまで整えられていない状態です。


ーなぜ表現方法が重要なのか


情報を集めた本人の中には確かに理解があります。しかし、それを組織で共有し、施策に活かすには、もう一段階の工夫が必要です。

一人の顧客の声をそのまま共有しても「一人の意見では判断材料にならない」と言われてしまうこともあるでしょう。

では複数人の声を集めればいいのかというと、今度は別の問題が生じます。

それは、集めた声をどう整理し、どう分析し、どう可視化すればいいのか分からないということです。

方法が分からなければ、逐語録やメモなど“生のデータ”をそのまま共有するしかありません。しかし、膨大な文字情報を渡されても、受け手は何をどう読み解けばよいのか困ってしまいます。

そもそも、顧客の声を組織で活用する仕組みや文化がなければ、現場の担当者が声を上げること自体のハードルも高くなってしまいます。


こうして、せっかくの顧客の声も活かされることなく眠ってしまうのです。


ーインタビュー後の分析とインサイトの可視化


詳しい分析手法については別の記事で解説しますが、ここでは全体の流れをお話ししたいと思います。


■インタビューから分析し、インサイトを導出するまでの流れ


インタビュー実査後、インサイトを「使える形」にするまでには、以下のようなプロセスを経ます。


  1. 発話データのコーディング

    逐語録から意味の単位を読み取り、グループ化したり分析者が新たに意味づけをして整理する。

  2. 分析とモデリング

    コーディングした内容から、ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、価値マップとして可視化する

  3. インサイトのテキスト化

    モデリングデータから読み取れる顧客の深層心理や行動の背景を、言葉として明文化する


この一連のプロセスを経て、はじめてインサイトは「組織で共有でき、施策に活用できる形」になります。

ざっくりと全体像をお伝えしましたが、ここからは少し踏み込んで、コーディング、モデリング、そしてインサイトのテキスト化についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。



●コーディング = 発話データを意味の単位で整理する

コーディングとは、インタビューで得られた発話データ(逐語録)を丁寧に読み込み、そこに含まれる出来事、感情、理由、価値観などの意味の単位ごとに、小さな「見出し」や「タグ(コード)」を付けて整理していく作業のことを指します。

この作業は、膨大な言葉の断片を単に分類するのではなく、人の「語り」に込められた文脈や意味を読み解き、それを言語化(編集作業)しながら構造を描き出していくプロセスでもあります。

質的研究では、この過程を「脱文脈化と再文脈化」と呼びます。 一度、語りの中から特定の言葉や出来事を切り出し(脱文脈化)、それらを新しい関係性の中で再び結び直す(再文脈化)することで、個々の語りを超えた構造的な意味やテーマを明らかにしていきます。

この意味で、コーディングとは「データを整理すること」であると同時に、研究者やデザイナーが新しい理解を編集していく創造的な作業でもあります。


●モデリング = 構造的な理解を可視化する

コルグロの分析は、社会学・人類学・心理学などの学術的な質的研究を基盤とし、その思想をUXデザインの実務に応用しています。 「現場の言葉」をそのまま引用するのではなく、そこに潜む意味を理論や設計の言葉へ翻訳していくという視点です。

UXデザインの実践も、この質的研究の思想を受け継いでいます。ユーザーの体験を理解し、そこから設計の方向性を導くという流れは、質的研究の思考を実務の中で応用したものです。コーディングはその翻訳の起点であり、リサーチで得られた生の声を、理解可能な構造へ整えていく工程です。

UXデザインの領域では、こうして得られた構造的な理解をもとに、ペルソナやカスタマージャーニー、価値マップなどのモデリングへと発展させていきます。

モデリングとは、コーディングによって整理されたデータを再構成し、ユーザーの行動、心理、環境のあいだにある因果関係や相互作用をモデル(構造図)として表現する作業です。このプロセスを通じて、観察された個別の事例を一般化し、体験設計に活かせる理解のかたちをつくり出します。

コルグロでは、現状のペルソナ、そのペルソナに基づくカスタマージャーニーマップ、そして価値マップとしての可視化を、モデリングと定義しています。

これらのモデリング成果物が、インサイトを「見える形」「使える形」に変換するための土台となります。



インサイトのテキスト化

ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、価値マップという「UXデザインの3点セット」は、顧客理解の基盤として非常に有用です。

しかし、施策の一工程ごとに(広告ビジュアルの修正、LPコピーの見直しなど)毎回モデリングデータをもとにインサイトを解釈していては、大きな労力がかかります。 そのたびに解釈のずれが生じやすくなることも否めません。

こうした課題を踏まえ、コルグロではモデリングで得られた知見を、施策に落とし込みやすい形で言語化しています。

インサイトのテキスト化には、大きく2つのアプローチがあります。

1つは、価値マップから読み取れたインサイトを総合的にテキスト化する方法。

もう1つは、前述の4つのカテゴリ(マーケティングコミュニケーション、ブランディング、UX/CX、商品開発)それぞれに適応した形でテキストをリサイクル・再編集する方法です。

カテゴリ別のテキスト化は必須ではありませんが、インサイトのコンテンツ化が難しい状況や、テキストだけのほうが都合がいい場合など、状況に応じてカテゴリごとに表現しておくことも有効です。

インサイトのテキスト化の構造

コルグロでは、インサイトを以下のような構造でテキスト化します:

  • 背景・文脈:顧客がどのような状況にいるのか

  • 発見内容:価値マップや発話から読み取れた深層心理や行動の理由

  • 示唆:このインサイトから、どのような施策の方向性が考えられるか

このように、ビジュアル(モデリング)とテキストの両方でインサイトを表現することで、組織内での共有がしやすくなり、日々の施策実行においても一貫した解釈のもとで動くことができます。




|インサイトを組織で活用するために


これまでの章では、インサイトとは何か、そしてどのように生み出されるのかをお伝えしてきました。

ここからは、実際に組織の中でインサイト活用を根付かせるために重要な要素について、詳しくご紹介して参りたいと思います。


ー共有とナレッジ管理の仕組みを整える


多くの企業では、インサイトを一度まとめて報告書として保存し、そのまま活用されないまま眠ってしまうケースが少なくありません。


しかし、インサイトは一過性のアウトプットではなく、時間の経過とともに社会や企業の環境が変われば、顧客心理も変化していくものです。

そのため、常に見直しと更新を重ねながら維持していく必要のある“生きた資産”といえます。

モデリングデータやインサイトを、誰もがアクセス・検索できる環境に集約しておくことで、情報の鮮度と整合性を保つことができます。

特に、部署ごとに独自で管理してしまうと、「似て非なる解釈」や「古いデータの再利用」が発生しやすく、意味の改変リスクを伴います。

そのため、管理責任者を明確にし、変更履歴が追える仕組み(例:Notionや社内イントラネットなど)を整備することが重要です。


さらにコルグロでは、先述のとおりインサイトをカテゴリ別に活用できるよう設計することを推奨しています。実運用では、関係部署の意見も取り入れ、現場で使える表現へ調整していくことが大切です。

各インサイトページには、根拠となる逐語録やモデリング図、活用事例を添付し、

定期的な見直しや、必要に応じた追加インタビューの実施を通じて最新の状況へ更新します。


このように、ナレッジを体系的に整理し、共有可能な状態を維持することは、インサイト活用を組織に根づかせるために欠かせない重要な取り組みです。


ー活用しやすいメディアに変換する


インサイトは、モデリングデータを根拠にテキストとして整理・表現することが基本です。

しかし、組織には「言葉よりもビジュアルの方が理解されやすい文化」や、「現場では音声や映像の方が共有しやすい環境」が存在します。そのため、組織の文化や利用シーンに最も適した形式で伝えることが、インサイトを組織の共通言語として根付かせる鍵になります。


メディア変換は単に「見やすくする」ためではありません。インサイトの背景にある人間の感情・体験の流れを直感的に理解するための、翻訳的な作業と言えます。

たとえば、顧客インサイトを組織に浸透させる工夫として、以下のような方法があります。


  • 図解やインフォグラフィックス化

    複雑な体験構造や心理の因果関係を、直感的に理解できるように視覚化する

  • 社内掲示やポスター化

    頻繁に社員が目にする場所(オフィス、会議室など)に掲示し、日常的に触れられるようにする

  • 映像・音声化

    実際の顧客の語りや感情のトーンを「生の温度感」としてチームに伝える

  • ストーリー化やナラティブ化:モデリングデータをもとに、顧客体験を物語として再構成する


特にナラティブとしての活用は重要です。

ストーリーとは、モデリングデータをもとに出来事に意味づけを行い、構造的に再構成された物語を指します。


その一方で、ナラティブストーリーは、そのストーリーを受け取る聴き手の解釈や文脈が重なり、意味が更新・拡張されていく物語です。

同じ素材であっても、語り方やメタ情報、問いかけ方によって、聴き手の現場知や経験が結びつき、解釈を含んだ「共有知」として機能します。

そのため、インサイトを各カテゴリや部署で活用する際には、それぞれの現場でどのように解釈し、どんな文脈で使われるのかを意識することが重要となります。


また、部門によっても最適なメディアは異なります。

マーケティング部門ではコピーライティングの裏付け資料として、デザイン部門では体験ストーリーボードとして、経営層や営業部門では意思決定の材料として動画・スライドを使う、といったように、同じインサイトを複数メディアで再編集・再共有することが望ましいと言えます。


コルグロでは、こうしたマルチメディア化を「組織理解を促す設計」として推奨しています。

テキスト、映像、音声、ビジュアルなど、目的に応じて複数の表現方法を組み合わせることで、チーム全体が同じ顧客像を思い描けるようになり、顧客理解の深度と一貫性を高めることができます。



ーAI活用の場合は別途、構造化しておく


2025年11月現在、LLM(大規模言語モデル)などのAIツールを組織で導入するケースが増えています。インサイトの活用においても、AIを効果的に使うことで、施策の検証や意思決定のスピードを大きく向上させることができます。


■AIペルソナの活用例


自社専用のAIペルソナをオリジナルで構築し、各施策で生まれたアイデアやアウトプットがターゲットにどのように響くのか、訴求力はどの程度あるのかを検証するといった活用方法があります。


AIペルソナを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 24時間いつでも検証できる

    • 深夜でも週末でも、思いついたアイデアをすぐにペルソナに問いかけられる

  • 複数案の比較が素早くできる

    • A案とB案、どちらがターゲットに響くかを瞬時に比較検証

  • チーム全体で同じペルソナ理解を持てる

    • AIペルソナを通じて、誰もが同じ顧客像にアクセスできる



具体的には、以下のような活用シーンが考えられます。

  • コンテンツ検証

    • 広告コピーやLPの文面が、ペルソナの価値観に照らしてどう響くかを確認する

  • アイデア出し

    • 施策のブレストで、ペルソナ視点での壁打ち相手として活用する

  • 社内共有・教育

    • 新メンバーがターゲット理解を深めるためのツールとして、また全社員が同じペルソナ像を持つための共通言語として活用する


余談:コルグロが開発中のAIペルソナ

コルグロでは現在、AIペルソナの開発を進めています。

その過程で重視しているのは、「参照データとして与えた情報以外の振る舞いをさせない」という設計方針です。

ただし、現時点では課題も見えてきています。

たとえば、人間であれば「なんとなく違和感がある」「言葉にはできないけれど、何かが引っかかる」といった曖昧な感覚を持つことができます。

しかし、AIペルソナは参照データにない情報については、こうした「言語化できないもやもや」を表現することができません。

そのため、現在の開発段階では、AIペルソナの活用は比較的表面的な確認に留めています。

たとえば、作成した広告のビジュアルを見せて「このキャッチコピーは、ペルソナの価値観と照らし合わせてどう感じるか」といった、明確に言語化できる範囲での検証が中心です。

AI関連サービスは目まぐるしいスピードで進化しており、今後さらに精度が向上する可能性もあります。

コルグロでも、引き続き試行錯誤を重ねながら、実務で使える形を模索している段階です。



■AIを効果的に活用するための構造化


AIの出力精度は、インプットされる情報の質に大きく依存します。

AIを効果的に活用するには、「指示の出し方」と「渡すデータの整え方」の両方が重要です。

チャットへの入力内容もさることながら、AIが参照するデータの構造次第で、出力の精度は大きく変わります。


①AIが理解しやすい構造化とは

Google(プロンプト初級ガイド)や、Chat GPTを開発しているOpenAI(Prompt engineering Guide)、Claudeを開発しているAnthropic (Prompt Engineering Overview)といった公式ガイドでは、効果的なプロンプト構造について共通して以下のポイントを推奨しています。

1. 明確で具体的な指示

「要約して」ではなく「3つの箇条書きで200文字以内に要約して」のように、出力の形式・長さ・複雑さを具体的に指定する


2. 情報の区切りと階層化

見出し(#, ##, ###)や区切り線(---)、箇条書きを使い、指示・背景情報・例などを明確に分ける


3. 文脈・背景情報の提供

略語や社内用語には説明を添え、タスクの目的や対象者を明示する


4. 具体例の提示

望ましい入力と出力の例を1-3個示すことで、期待するスタイルや形式をAIに理解させる


5. 段階的な思考の誘導

複雑なタスクは「ステップバイステップで考えて」と指示し、サブタスクに分解する


6. 用語の統一

同じ概念に対して複数の言葉を使わず、一貫した用語を使用する


②参照データの構造化とは

AIが活用される現場では、AIが学習・参照する「データの整え方」が最も成果を左右します。 データが曖昧だったり、構造が不明確だったりすると、どんなに優れたプロンプトを使っても期待した出力は得られません。

OpenAIも「ソース資料を最終的な回答形式に近づけるほど、モデルが誤解するリスクが減る」と明示しています。

たとえば、先述したAIが理解しやすい構造で四半期業績レポートを次のように整形しておくとAI分析が安定します。


【NG例】

Q1売上:増加傾向。Q2やや落ちたが年末に回復予定。 関東の店舗が好調である。


【OK例 1 (項目と内容で構造化)】

  • 四半期 Q1:

    • 売上(前年比):+8%

    • 主な変動要因:新商品Aの販売好調

    • 地域別トピック:関東で伸長


【OK例2 (表で表現する)】

四半期

売上(前年比)

主な変動要因

地域別トピック

Q1

+8%

新商品Aの販売好調

関東で伸長

Q2

-3%

天候不順・在庫調整

九州で減少

このように定型フォーマットで構造化しておくことで、AIが文脈を誤読せず、定量・定性的な要素を正確に組み合わせて出力できます。


■AI活用の注意点


ただし、AIはあくまで補助ツールです。AIには人格があるわけでも、人間のように五感から得られる情報や感情があるわけでもありません。

そのため、コルグロでは、真のインサイトをAIのみで完結して抽出・分析することは現時点では難しいと判断しており、AIと人間の判断を併用しながら運用していくことを推奨しています。


というのも、商品の独自性や価値は、多くの場合、一般化された情報ではなく顧客の尖った声、いわば「外れ値」から生まれます。そのような機微は、創造的な人間の活動によってこそ見出されるものです。 肉体を持たないAIには、人間のように五感から感じ取る体験がありません。最終的な判断や、現場での細やかな調整は、人間の感性と経験が不可欠です。


AIは強力な補助輪ですが、過信せず、人間の最終判断で磨き込む前提が重要だと考えています。 AIペルソナの具体的な活用方法や限界については、別の記事で詳しく解説する予定です。



|まとめ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本記事の結論をまとめると、実は非常にシンプルです。


インサイトは、発話データのコーディングとモデリングで構造化し、施策に使える言葉へテキスト化し可視化したもの。 さらに“共有・再利用しやすい形”に編集してはじめて、組織を動かす力となり利益に繋がる活動となる。

ということをお話して参りました。

これらのことから、インサイトは「見つけて終わり」ではないということがお伝えできたと思います。


最後に、改めて本記事の要点を整理してみましょう。


  • インサイトの「導出」と「活用」は別物

    インタビューでインサイトを得ても、それを「使える形」にしなければ施策に活かせない


  • 4つのカテゴリで活用シーンを整理する

    マーケティングコミュニケーション、ブランディング、UX/CX、商品開発という視点で、インサイトを組織の共通言語にする


  • インタビュー後の分析・インサイト可視化~共有できる形にするまでのプロセス

    発話データをコーディングし、ペルソナ・CJM・価値マップで可視化し、カテゴリ別にテキスト化することで、組織で共有できる形にする


  • 共有とナレッジ管理の仕組みを整える

    インサイトは「生きた資産」として、継続的に更新・再利用できる環境を構築する


  • メディア変換とAI活用で組織浸透を加速

    テキストだけでなく、図解・映像・ナラティブなど複数のメディアに変換し、AIペルソナも活用することで、チーム全体が同じ顧客理解を持てるようになる



次回のブログでは、「経営に効くN1CXインタビュー」や顧客リサーチの実践をテーマに、

調査の全体設計となるリサーチデザインの考え方を中心にお話しします。


「何を明らかにしたいのか」「どのような仮説や問いを持って臨むのか」といったリサーチ設計の段階は、インタビュー実査における深掘りの精度や分析の質、そして得られる結果の解像度に直結する非常に重要なステップです。


あわせて、組織にリサーチ文化を根づかせるための考え方や、顧客インタビューを内製化する場合と外部委託する場合の使い分けについても詳しくご紹介します。


本記事が、社内でインサイトをより効果的に活用するためのヒントやアイデアにつながれば幸いです。




コルグロでは、顧客へ実施するN1CXインタビュー、そしてインナーブランディングや社内文化醸成などを目的とした従業員へのN1EXインタビューのサービスを提供しています。

ご興味をお持ちいただけましたら、サイト内のチャットまたはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください!




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