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"経営に効く”顧客インタビューの実践 ── 設計の全体像

  • 執筆者の写真: コルグロ 福岡
    コルグロ 福岡
  • 2025年11月25日
  • 読了時間: 25分

更新日:2025年11月26日

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こんにちは、コルグロの福岡です。


前々回では、顧客インタビューがなぜ必要なのか、顧客インサイトとは何かを整理しました。 そして前回の記事「顧客理解が資産に変わるーインサイトを組織で使うためのアイデア」では、顧客インタビューで得られたインサイトを「使える形」に整え、組織で活用する方法についてお伝えしました。 得られたインサイトをどのように施策に活かすか、4つの視点から具体的に解説しました。


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しかし、インタビューを実施し、インサイトを施策に落とし込んだとしても、それが本当に持続的な利益とつながり、「経営に効いている」と言えるのでしょうか。


本記事では、この問いに答えるために、3つの視点から「経営に効く」顧客インタビューの実践方法を解説します。


まず、「経営に効く」とは具体的に何を意味するのかを明確にします。 次に、効果的な顧客インタビューを実現するための調査設計(リサーチデザイン)について解説します。



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コルグロが提供する「N1CXインタビュー」は、手法としてはデプスインタビューで、顧客体験(CX)の改善や構築を目的に設計されたインタビューサービス

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|"経営に効く”とは一体なにを指しているのか?


「顧客インタビューは大事だ」「顧客の声を聞くべきだ」、そう語られることは少なくありません。

実際、多くの企業が顧客の声を拾い、何らかの形で活用しようとしているのではないでしょうか。


しかし、現実はどうでしょうか。 拾った声は数値化しにくく、せっかくの「顧客の声(VOC)」も補足資料として保管されるだけで終わってしまっていたり、

手間をかけてインタビューを実施しても、得られた情報が施策に結びつかず、「やっただけ」で終わっている、ということも少なくないのではないでしょうか。


そして、顧客調査を実施されている一方で、「顧客の声を聞くこと自体がリスクだし無意味ではないか」「顧客の声に従えばコスト高の高額商品になり結果的に需要のない商品を作ってしまうのではないか」という意見も存在します。


確かに、顧客の要望をそのまま製品に反映すれば、様々なリスクと隣り合わせとなり、また企業の独自性が失われ、競争力を損なうリスクもあります。


では、顧客インタビューが「経営に効く」とは、具体的にどういう状態を指すのでしょうか。




ー経営学から紐解く「経営に効く」の条件


この問いに答えるために、まず経営学の知見を借りて考察していきたいと思います。



巨匠たちが共通して強調する「診断」の重要性


経営学の巨匠たちは、立場も時代も異なるにもかかわらず、経営の出発点は「状況を正しく理解すること」であると一貫して語っています。


経営学の父ピーター・ドラッカーは「経営の出発点は事実であり、顧客の現実を理解することだ」「顧客が誰で、何を価値とするかを知ることが出発点である」と述べています。 競争戦略論の第一人者マイケル・ポーターは「戦略は競争環境の分析から始まる」と説き、 現代戦略論の巨匠リチャード・ルメルトは、良い戦略の核として最初に「診断」を置き、その精度が戦略の成否を左右すると断言しています。


彼らがそろって強調するのは、「戦略も施策も、まずは状況を正しく理解することから始まる」ということ。 つまり過去・現状から「事実・現実・顧客・市場」を診断することを起点とするという解釈ができます。


ここで言う「戦略」とは、自社が保有する内部資源と外部環境と機会・制約を見極め、資源をどこに集中させるかを選択し、その選択を実行可能な計画に落とし込むことを指します。 戦略を持たないことの最大のリスクは、組織が「何をすべきか」を判断できず、資源が分散し、最終的に大きな浪費につながってしまうことをはらんでいるということ。


戦略とは明示されて初めて機能し、その戦略を具体的な計画に落とし込む際の出発点こそが、顧客理解(顧客インサイト)であると解釈できます。

ここを誤れば、どれほど完璧に見える戦略も、どれほど大きな投資ができたとしても、現実の顧客行動や市場の変化に噛み合わず、成果にはつながりにくいものになってしまうと言わざるを得ません。



顧客インタビューは「診断」の手段である


ここで重要なのは、巨匠たちが言う「事実に基づいて考える」「顧客を理解する」とは、「顧客の要望をそのまま聞く」ことではないという点です。


要望をそのまま取り入れれば、差別化できない、平凡で高コストな製品になるリスクがあります。 顧客の声通りにつくったのに売れない──という失敗は、まさにここに原因があります。


顧客インタビューの本質は、顧客の要望を聞くことではなく、顧客の行動や心理の背景にある真実(顧客インサイト)を発見し、事業の独自性と価値の源泉を見つけることにあります。


だからこそ顧客インタビューは、経営戦略の根幹を支える「診断活動」であり、経営の実行力を左右する最も重要なプロセスなのです。



そして、この考え方は経営理論だけにとどまらない


顧客インサイトを起点にすべきだという考えは、戦略論だけではなく、価値創造を扱うすべての領域で共通しています。


IDEOのティム・ブラウンが提唱したデザイン思考は、「デザイナーの感性と手法を用いて、ユーザーのニーズと技術的実現性、持続的なビジネス戦略を統合し、顧客価値を市場機会に変える手法」とされ、最初のステップとして「顧客を深く理解する」ことを置いています。


人間中心設計(HCD)は、人間工学やユーザビリティの知識を使ってシステムをより使いやすくすることを目指すアプローチであり、顧客の利用文脈・行動・心理を観察することが起点となります。


クリステンセンのジョブ理論は、顧客が"どんな進歩(ジョブ)を達成したくて商品を選ぶのか"を理解することを目的とし、既存商品が見逃している価値を探ります。


ブルーオーシャン戦略も、既存顧客だけでなく非顧客の回避行動や利用されていない価値を理解するところから新市場を開拓します。


これらは別々の領域ですが、「価値を導き出すには、インサイトから生まれる」という一本の線でつながっています。


さらに共通して言えるのは、これらはいずれも一時期「ビッグワード」としてトレンドになったものであり、「なんとなく耳にしたことがある」という方も多いのではないでしょうか。

そのため、一過性のトレンドとして捉えられがちですが、これらの考え方は、顧客理解を経営に活かすための本質的な「足がかり」となるものです。流行に左右されるのではなく、その本質を理解し、自社の顧客理解に取り入れることが重要です。



つまり、「経営に効く」とは何を指しているか?


では具体的に、「経営に効く」というのは何を指しているのか。


それは、持続的な成長と利益を実現する取り組みを指します。


ではなぜ、顧客インサイトを起点にすることが「経営に効く」のか。


それは、顧客自身が認識しておらず言語化もしていない「深層にある真のニーズ」を導き出すことで、競合が見落としている価値を発見し、独自性のある戦略を立案できるからです。


その結果、限られた資源を最も効果的な領域に集中させることができ、より確実に利益につなげることができるのです。


顧客インタビューは、この顧客インサイトを発見するための最も有効な「診断活動」です。

現実を把握・分析し、その結果に基づいて戦略と施策を立案・実行する——この顧客起点の経営こそが、持続的な利益を生み出します。


つまり、戦略立案であっても、商品開発であっても、イノベーション創出であっても、顧客インサイトを起点にすることこそが、「経営に効く」ことに直結する取り組みなのです。




顧客インタビューの設計の考え方


前のセクションで、顧客インサイトを起点にすることが「経営に効く」ことを確認しました。


では、その正しい診断を行うためには、どのような準備が必要なのでしょうか。


ここでは、実務的な手順に入る前に、経営に効くリサーチにするための設計の心構えについてお話したいと思います。

ちなみに、具体的なハウツーについてはまた別の記事でお話しできればと考えています。



ー調査の設計(リサーチデザイン)とは


調査の目的は新しい知識や情報を得ることにあります。

調査設計(リサーチデザイン)とは、調査の基本設計であり、調査全体の設計図です。


家を建てるときに設計図が必要なように、顧客インタビューにも設計図が必要です。


例えるなら、大量の数字が入ったExcelデータを開いて、様々なフィルターをかけて中身を読み解くのと同じです。

どのようなフィルター(視点)で顧客を分析し、顧客の何を明らかにして仮説の精度を高めていきたいのか。


これをまず調査の設計をする企画段階で明らかにしておく必要があり、非常に重要なプロセスとなります。

調査設計(リサーチデザイン)が曖昧なまま進めることが、調査が「やっただけ」で終わってしまう大きな原因と言えます。

設計図なしで進めれば、「何を明らかにしたかったのか」が曖昧になり、集めた大量の定性データ(顧客の声)から、表面的ではない真のニーズを導き出すことができません。



ー学術的な調査の基本設計(リサーチデザイン)の紹介と重要な視点


世の中の調査系のハウツーを参考するのも有益ではあるのですが、ここでは一旦、まず源流となる社会学の考え方を見てみたいと思います。


日本の質的研究を牽引されてこられた佐藤郁哉先生は、「ビジネスでの調査において、リサーチデザイン(調査設計)について定義している書籍はほとんどない」と言及されており、多くの企業が曖昧なまま調査をしている現状を指摘されています。


佐藤先生は、著書『ビジネス・リサーチ (はじめての経営学)』で調査設計(リサーチデザイン)を以下の6つの要素で説明されています。




引用: 佐藤郁哉『ビジネス・リサーチ (はじめての経営学)』


  1. 問い

    どのようなリサーチ・クエスチョンを中心にして調査を進めるのか?

  2. 仮設

    一連の調査課題レベルの問いに対応する仮説を、どのような変数の組み合わせとして設定するか?

  3. 理論

    どのような理論ないし概念の「レンズ」 を通して研究テーマ をとらえるか?

  4. 調査対象

    サーチ・クエスチョンに対する答えを求めて いく上で、どのような基準によって最も相応しいと思われる事例を選び出せばよいか?

  5. 変数

    取りあげた事例が持つさまざまな属性 (変数) の中でも特にどのような属性に焦点をあててデータ収集をおこなうか?

  6. 調査技法

    それぞれの仮説の構成要素である変数について、 どのよ うな調査技法を用いてデータを収集し、 また分析していくか?




調査の成功のカギを握るリサーチ・クエスチョン「問い」とは何か?


ここで重要なのは、佐藤先生の他の著書『リサーチ・クエスチョンとは何か?』でも述べているように、筋のいい「リサーチ・クエスチョン(問い)」を立てることの重要さと難しさです。

リサーチ・クエスチョンとは、端的に言うと調査の「問い」のことですが、「良い問い」の条件として、以下の3点を挙げています。



  1. 意義がある:調査する価値がある問いか

  2. 答えが出せる: 実証可能な問いか

  3. 身の丈に合っている: 自社のリソースで実行可能か、分析者の技量など、会社の現状として身の丈に合った問いか



この3点がそろった「筋のいい問い」を立てることが、調査の成否を左右すると説かれています。


冷静に考えてみれば当然のことにも思える内容ですが、実際には調査の起点が会社都合になりがちであるからこそ、この条件は忘れてはならない大切な指針だと感じています。


学術的なリサーチ・デザインの詳細は、本記事の範囲を超えてしまうのと、解説も筆者にとっては容易ではないため、一旦ここまでのご紹介に留めておきます。


いずれ詳しく解説してみたいと思いますが、まずは佐藤先生の著書を直接お読みいただくことをお勧めします。 特に、ハウツー本を読んでも自社の調査に当てはめることが難しいと感じている方には、ビジネスにおける調査に役立つ情報が詰まっていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。




ー実務における調査設計は「調査企画書」を作ることから始まる


実務においては、調査についての情報・要素を「調査企画書」としてまとめ、関係者やステークホルダーと共有することが一般的です。


調査を一人で完結する場合もあれば、発案者が経営者から承認を得る必要がある場合、あるいは経営者が適任者に指示する場合など、さまざまなケースがあります。


いずれの場合も、調査企画書を通じて関係者間で認識を揃えることが、調査の成功への第一歩となります。


調査企画書の内容は調査会社や企業それぞれで異なりますが、ここではコルグロがN1CXインタビューの設計などで使っている調査企画書の項目をご紹介します。




コルグロの調査企画書の内容(簡易版)


  1. 調査背景

    なぜこの調査が必要となったのか、現状の課題、問題意識、調査の動機やきっかけ

  2. 調査目的

    何を明らかにしたいか、何を実現したいか、調査後に達成したいゴール

  3. 調査概要

    1. リサーチ・クエスチョンと仮設

      どのような具体的な問いに答えるのか、どんな仮説を検証するのか

    2. カテゴリ

      どの視点で分析するのか、コルグロ独自の4つのカテゴリから選ぶ

    3. 調査手法とサンプル

      どのように、誰に、何人聞くのか

    4. 分析手法と成果物

      どう分析し、何を作るのか(アウトプット・成果物)、そしてそれをどう使いたいか


これらを事前に決めることで、調査の方向性が明確になり、得られたインサイトを確実に施策につなげることができます。



コルグロの調査設計書(ドラフト)Sample
コルグロの調査設計書(ドラフト)Sample


それでは、各ステップを具体的に見ていきましょう。




■STEP1 : 調査背景と調査目的の明示化


●調査背景

調査背景とは、なぜこの調査が必要となったのかを示す部分です。

具体的には、現状の課題や問題意識、そして調査をしたいと思った「きっかけ」を明確にします。

たとえば

  • ECサイトの継続購買率が3ヶ月前から突然15%低下している

  • 新商品の認知度が目標に届かず、マーケティング施策の効果が不明

  • 競合との差別化ができておらず、ブランド価値の再定義が必要

調査背景を明確にすることで、関係者間で「なぜこの調査をするのか」という認識を揃えることができます。



●調査目的

調査目的とは、この調査で何を実現したいのかを一言で表したものです。

たとえば

  • 継続購買率低下の原因を特定し、6ヶ月以内に前年水準まで回復させる

  • 新商品の認知度を高めるための効果的なマーケティング施策を立案する

  • 顧客が求めるブランド価値を明確にし、競合との差別化戦略を策定する

調査目的が曖昧だと、インタビューの質問も曖昧になり、得られた情報を活かせません。



調査目的を設定する際のポイント


  1. 具体的に: 「顧客理解を深める」では曖昧すぎる。「〇〇を特定し、△△を実現する」と具体的に。

  2. 1つに絞る: 複数の目的を詰め込まない。1つの調査で1つの目的。

  3. 経営課題と紐づける: 「なぜこの調査が必要なのか」を経営課題と結びつける。

  4. 達成基準を示す: 可能であれば「6ヶ月以内に〜」「〇〇%改善」など、具体的な基準を入れる。




■STEP2 : 問いと仮説を設定する


●問い=リサーチ・クエスチョンとは?

リサーチ・クエスチョンとは、調査によって最終的に答えを出すべき具体的な問いです。

調査目的が「何を実現したいか・ゴール」を示すのに対し、リサーチ・クエスチョンは「どのような問いに答えるのか」という調査の焦点を定めます。


問い・リサーチ・クエスチョンの重要なポイント


  • 疑問文形式(「?」が付く文章)で表現する

    • 調査者自身がその本質を常に意識できるようにするため

  • 調査の中心となる問い

    • 調査全体の方向性を定める「問い」として機能する




●仮説とは?

仮説とは、リサーチ・クエスチョンに対応して設定される「仮の答え」です。

リサーチ・クエスチョンが「Q」であることに対し、仮説はその答え「A」となります。

つまり、Q&Aとして成立します。 仮説の目的は、調査研究に関わる一連の作業の基本的な方向性や焦点を明らかにすることにあります。 佐藤先生によれば、仮説は「変数の組み合わせ」として設定することで、検証可能な具体的な予測になる、とのことです。


「〇〇が△△に影響している」 

つまり 「○○である変数Xが、△△である変数Yに影響している」ということです。


調査設計の仮説を設定する際の重要なポイント


①断定表現で記述する

仮説は「仮の答え」で


あるため、「〜である」「〜が影響している」といった断定表現(言い切り)で記述します。

筆者もよくやりがちだったのですが、仮説の文末に「〜ではないか?」と疑問符を付けるのは、原理的に誤りとなります。


②変数の組み合わせとして考える

仮説は、原因に該当する独立変数(x)と結果に相当する従属変数(y)の関係として表現します。

これにより、抽象的なアイデアではなく、検証可能な具体的な予測を設定できます。


③仮説は「検証するため」のもの

仮説は、「証明するため」に立てるのではなく、「検証するため」に立てるものです。

最初に設定した仮説が「答え」である確率は低いものである、ということは体感的に理解していても、いざ仮説を立てようとすると完璧を求めてしまいがちです。

設定した仮説を絶対視せず、データによって仮説を精度をよくしていくという姿勢が重要です。


④無仮説調査を避ける

仮説を立てずに行われる、いわゆる「出たとこ勝負」的な調査の多くは、情報価値が極めて低い結果に終わってしまいます。

また、事前に仮説がないと、データ収集後に結果を見てから、特に話題になりそうな部分だけを選び出し、後付けで都合の良い解釈をしてしまうことに繋がります。

これは、いわゆるアンケート調査と言われるような質問紙調査であっても同様です。

マーケティング戦略・施策を計画し実行する上で、無仮説であることは様々な問題を引き起こす原因となります。

仮説があることで、インタビューガイド(質問票)の設計がスムーズになり、分析の際も「何を確認すべきか」が明確になります。




●リサーチ・クエスチョンと仮説の表記について

それぞれの定義を確認したところで、ここでは具体的にどのように書けば良いのかを見ていきたいと思います。

表記の仕方についても、佐藤先生の推奨している方法を参考にさせて頂いています。

これらの表記ルールを意識しないと、調査設計を見返す際に内容が分かりにくくなり、分析や報告書の作成時に支障をきたすことがあります。

そのため、ぜひ参考にしたい表現方法のひとつです。


リサーチ・クエスチョン(問い)

疑問文形式で表現  /「なぜ〜なのか?」

仮説(リサーチクエスチョンに対する仮の答え)

断定表現で記述  /「〇〇が△△に影響している」


では、リサーチ・クエスチョンと仮説をどう組み合わせていけばよいのでしょうか。


例題で見てみたいと思います。


【例】

①調査目的:継続購買率低下の原因を特定し、6ヶ月以内に前年水準まで回復させる

②リサーチ・クエスチョン(問い):なぜ継続購買率(変数Y)が下がったのか? どの変数(X)が影響しているのか?

③仮説(リサーチ・クエスチョンに対する仮の答え):結果である「Y」に対する原因を「X」として、以下の5つを検証します。

検証する変数(要因X)具体的な仮説シナリオ


検証する変数(要因X)

具体的な仮説のシナリオ

1. 商品競争力

競合の参入により、自社商品の魅力が相対的に低下している

2. 配送・梱包体験

届くのが遅い、箱が潰れているなどの体験が悪化している

3. サイトのUX/UI

サイト変更により「買いにくい」と感じる顧客が増えている

4. サポート品質

トラブル時の対応が悪く、信頼を損なっている

5. 広告との整合性

広告の訴求内容と実際の商品にズレがあり、期待を裏切っている




■STEP3 : カテゴリを設定・調節する


調査背景、調査目的、リサーチ・クエスチョン(問い)、仮説を設定したところで、次に考えるべきは「この調査で得られたインサイトを、どの領域で活用するのか」という視点です。

コルグロでは、インサイトを活用するシーンを4つのカテゴリに分類しています。


①マーケティングコミュニケーション

広告、LP、メッセージング、プロモーションなど

②ブランディング

ブランドストーリー、ナラティブ、ブランド体験の設計など

③UX/CX

顧客体験の改善、新たな体験価値の創出

④商品開発

商品・サービスの企画、改良、PMF検証など






●なぜカテゴリを設定するのか

調査背景、目的、リサーチ・クエスチョン、仮説を明示化しても、内容が複雑になり、関係者全員が同じ理解を持つことは容易ではありません。


そこでコルグロでは、4つのカテゴリという分かりやすい軸で調査の方向性を表現することで、ステークホルダー全員が共通認識を持てるようにしています。

以下のような場面で「判断の指針」として機能します。


①企画段階: 複雑な調査設計を、一目で理解できる形でステークホルダーと共有

②インタビュー中: 限られた時間の中で、どの話題を深掘りすべきかの判断基準

③分析時:どの視点でデータを読み解くべきかの指針

④報告書作成時:導出したインサイトをもとに、各カテゴリの視点から示唆や提言を整理する指針

⑤インサイト活用時:どの部署・どの施策で使うべきかの整理


カテゴリの設定方法は、調査の状況によって柔軟に選択できます。

シンプルな調査設計であれば1つに絞って選択し、カテゴリの領域が重複するような内容であれば、割合で表現することも有効です。


つまり、カテゴリは調査の全プロセスを通じて、関係者の共通言語となり、判断の拠り所となるものです。



■STEP4 : 調査手法とサンプルを設計する


リサーチ・クエスチョンと仮説、カテゴリを設定したところで、次に考えるべきは「どのような方法で、誰から、何人分のデータを集めるか」です。



●インタビューの調査方法を選ぶ

ひとつは、質問を完全に決めるか、適宜調整しながら進めるかということ(構造化インタビュー vs 半構造化インタビュー)。

構造化インタビューというのは、あらかじめ決められた質問を順番通りに全員に同じように聞く方法で、定量的な分析に向いているものの、深掘りが難しい特徴があります。

半構造化インタビューとは、質問の大枠(インタビューガイド)を用意しつつも、対象者の回答に応じて柔軟に深掘りできる方法であり、インタビュー実施中に顧客それぞれに対して行動を起こした理由や感情など、深層心理に繋がる行動の背景にある「なぜ」を探るのに適しています。


もうひとつは、1対1の個別で行うか、グループで行うかということです。

デプスインタビュー(1対1の個別)は、個人の深層心理や体験を深く掘り下げられ、他者の意見に影響されず率直な意見を引き出しやすい方法です。

一方、グループインタビュー(FGI)は、複数人(通常4〜8名)で実施し、参加者同士の対話から新たな気づきが生まれやすく、短時間で多くの意見を集められますが、個人の深掘りは難しくなります。


コルグロでは「半構造化デプスインタビュー」を推奨しています。

顧客インサイトを導き出すためには、表面的な回答ではなく、深層心理を探る必要があります。

この方法により、1人ひとりの体験を深く理解し、他者の意見に影響されない率直な語りを引き出すことができます。



●誰にインタビューを行うのか

インタビューの対象者は、目的や状況によって異なりますが、コルグロではまず最優先で実施すべき対象者として、ロイヤル顧客を推奨しています。

その理由は、企業の売上の8割は2割のロイヤル顧客で支えられているという考え方(パレートの法則)があるためです。

ロイヤル顧客を深く理解することで、ビジネスに最も大きなインパクトを与える施策を導き出せます。



1.セグメントを揃えることの重要性

ロイヤル顧客と一度購入した人、離反客などを混在させずに同じセグメントの人に実施することが重要です。

その理由は、調査では偏ったものにならないよう理論的飽和を目安に設計しているためです。

同じような条件の人たちに行い、その人々がどうだったかを導き出すことが求められます。

ちなみに、N1分析を開発された西口一希さんの方式では、顧客セグメンテーションで分けてセグメントごとに調査分析を行うというフレームワークがあります。 彼の著書では、「どのセグメントに実施するか迷ったら、ロイヤル顧客へ実施することを勧める」と述べられています。


2.状況に応じた対象者の選択

ただし、調査の目的によって対象者は変わります。

離反客対策が重要な局面であれば離反客へ実施しますし、ブランドを認知していない競合商品を利用している人に行うこともあれば、極端な使い方をしているエクストリームユーザーに実施することもあります。

冒頭で述べたとおり、状況によってどんな属性のグループ(セグメント)に実施するかは変化するものであり、むしろ戦略的に自社が設定したセグメントごとにインタビューを実施し、全方位で分析を行うことが望ましいでしょう。

しかし、リソースは有限です。どのセグメントを実施するか、どのタイミングで行うかなどを戦略的に考え計画することは、難しい選択を迫られることもありますが、非常に重要です。

ちなみに、イノベーションやブルーオーシャン領域を創発することを目的とした場合、エクストリームユーザーや非顧客への実施も行う場合はあります。


いずれにしても、聞きやすい相手というだけで闇雲に対象者を選定しては有益な情報には繋がりにくいということです。



●何人にインタビューを行うのか

コルグロでは、理論的飽和数をベースに考えています。

理論的飽和に達するには一般的に15〜30名と言われており、コルグロでは20名への実施を推奨しています。

西口一希さんも、「20名ほど実施すれば、自社にとって有益なインサイトが導出できる十分な数」と言及しています。


1. 目的によって異なる人数

ただし、調査の目的によって適切な人数は異なります。

インサイト導出を目的とした調査では20名程度が推奨されますが、具体的な操作方法などを確認するユーザーテストなどのUXリサーチでは、3〜5名ほどの実施となるケースも少なくありません。

いずれにしても、状況と目的によって現実的に実施が可能な人数は異なってきます。


2. コルグロの提供しているN1CXインタビューとN1EXインタビュー

コルグロでは、顧客体験(CX)を改善するためのN1CXインタビューと、従業員体験(EX)を整備するためのN1EXインタビューを提供しています。

CXとは、マーケティングコミュニケーション、ブランディング、UX、商品開発など、顧客が体感することのできる体験全体を指します。

N1CXインタビューは、顧客インサイトを導出することが目的のため、20名の実施を推奨しています。

一方、N1EXインタビューは、期待するCXのための土台作りとして従業員へ行うインタビューであり、状況次第で大幅に変わりますが、5名程度を最低人数として推奨しています。





■STEP5 : 分析手法と成果物を定義する

インタビュー実査後、得られたデータをどのように分析し、どのような成果物を作るのか 事前に定義しておくことが重要です。


1. 分析手法

コルグロでは、以下のプロセスで分析を行います。


①逐語録の作成とコーディング

インタビューの録音データから逐語録を作成し、QDA(質的データ分析)の手法を用いてコーディング作業を行います。具体的には、KJ法やKA法などを活用し、発話データを意味の単位ごとに整理します。


②価値マップの作成とインサイトの導出

コーディングしたデータをもとに価値マップを作成し、顧客インサイトを導出します。


③ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成

KA法を行う過程で、数人のペルソナをモデリングします。そして、そのペルソナに沿ってカスタマージャーニーマップを作成します。


④その他の分析手法

N1EXインタビューなど、用途によってはSCAT法などの分析手法を取り入れることもあります。

⑤報告書の作成

分析結果を報告書にまとめ、成果物として納品します。




2. 成果物の定義

一般的に、インタビューを実施して分析を行った後の成果物・アウトプットといわれるのは、以下の3点です。


  1. 現状のペルソナ(As-Is)

  2. カスタマージャーニーマップ

  3. 価値マップ


この3点を基本の成果物として押さえておくことで、後から個別に必要とするシーンに応じてコンテンツ化を行うことができます。


ただし、分析を行った後にどのような部署のどんな役割の人がそれらを使うかによって、成果物は変わるものです。

そのため、調査企画の段階で「誰が、どのように使うか」を明確にしておくことを推奨しています。




まとめ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本記事では、「経営に効く」顧客インタビューを実現するための、調査設計(リサーチデザイン)について解説してきました。


結論をまとめると、非常にシンプルです。


「経営に効く」調査とは、顧客インサイトを起点にした戦略立案と施策実行により、持続的な成長と利益を実現する取り組みのこと。 そして、そのためには適切な調査設計(リサーチデザイン)が不可欠である。

ということをお話ししてきました。


調査設計が曖昧なままでは、どれほど多くのインタビューを実施しても、「やっただけ」で終わってしまいます。




最後に、改めて本記事の要点を整理してみましょう。



  • 「経営に効く」とは何か 顧客インサイトを起点にした戦略立案と施策実行により、持続的な成長と利益を実現すること。経営学の巨匠たちが共通して強調する「診断」の重要性が、その根拠となる


  • 調査設計(リサーチデザイン)の重要性 調査全体の設計図であり、「何を明らかにしたいのか」を明確にするプロセス。設計図なしで進めれば、得られた情報を活かせない


  • 調査企画書の5つのステップ STEP1:調査背景と調査目的を明示化 STEP2:リサーチ・クエスチョン(問い)と仮説を設定 STEP3:カテゴリを設定(4つの活用シーンから選択) STEP4:調査手法とサンプルを設計(半構造化デプスインタビュー、対象者、人数) STEP5:分析手法と成果物を定義


  • 筋のいい「問い」を立てる 佐藤郁哉先生が提唱する「良い問い」の3条件(意義がある、答えが出せる、身の丈に合っている)を満たすことが、調査の成否を左右する


  • 仮説は「検証するため」のもの 仮説は断定表現で記述し、変数の組み合わせとして設定する。「証明するため」ではなく、「検証するため」に立てる


  • カテゴリの設定は調査の全プロセスを導くもの 企画段階からインタビュー実査、分析、報告書作成、インサイト活用まで、関係者の共通言語となり、判断の拠り所となる


  • セグメントを揃える ロイヤル顧客、離反客、非顧客などを混在させず、同じセグメントへ実施することで、理論的飽和を目指す


  • 理論的飽和を目安に人数を設定 一般的に15〜30名、コルグロでは20名を推奨。ただし、目的によって適切な人数は異なる




本記事が、調査設計を見直すきっかけや、社内で顧客インタビューを実施する際の参考になれば幸いです。


次回のブログでは、実際のインタビューで必要なインタビューガイドについて詳しく解説する予定です。


ぜひ引き続きお読みいただければと思います。



コルグロでは、顧客へ実施するN1CXインタビュー、そしてインナーブランディングや社内文化醸成などを目的とした従業員へのN1EXインタビューのサービスを提供しています。

ご興味をお持ちいただけましたら、サイト内のチャットまたはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください!





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